大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和56年(わ)261号 判決

本籍

兵庫県高砂市荒井町南栄町一一七〇番地

住居

同 県加古川市平岡町新在家一丁目二六三番地の七

医師

平津とめ子

昭和一〇年一一月六日生

本籍

兵庫県高砂市荒井町中町一三一一番地

住居

同 県加古川市平岡町新在家一丁目二六三番地の七

病院事務長・金融業

釣本彦七

大正六年八月一七日生

右被告人両名に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官東厳出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告人平津とめ子を罰金九五〇万円に、同釣本彦七を懲役一年六月及び罰金六五〇万円に処する。

被告人両名において、右罰金を完納することができないときは、いずれも金二万円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。

被告人釣本彦七に対しこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人平津とめ子は、兵庫県加古川市平岡町新在家一丁目二六三番地の七において、平津産婦人科医院を営むもの、被告人釣本彦七は、同医院の事務長として同女に代り同医院の業務全般を統括するかたわら、自ら貸金業を営むものであるが

第一  被告人釣本彦七は、被告人平津とめ子の右事業に関し、所得税を免れようと企て

一  昭和五二年度分の実際の所得金額は六八、八一五、二四一円で、これに対する所得税額は三六、九四三、七〇〇円であるのにかかわらず、自費診療収入の一部を除外し、よつて得た資金を仮名の定期預金とするほか自己の営む貸金業の資金に流用する等の手段により、右所得の一部を秘匿した上、昭和五三年三月一四日、同市加古川町木村字木寺五番地の二所在の加古川税務署において、同税務署長に対し、昭和五二年度分の所得金額が一九、九七七、二七八円で、これに対する所得税額が六、四二四、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年度分の所得税三〇、五一九、六〇〇免れ

二  昭和五三年度分の実際の所得金額は八八、五一七、六八四円で、これに対する所得税額は五〇、九八六、五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の手段により、右所得の一部を秘匿した上、昭和五四年三月一四日、前記加古川税務署において、同税務署長に対し、昭和五三年度分の所得金額が二六、七四六、二一二円で、これに対する所得税額が九、八九一、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年度分の所得税四一、〇九五、一〇〇円を免れ

第二  被告人釣本彦七は、前記の自己の事業に関し所得税を免れようと企て

一  昭和五二年度分の実際の所得金額は三二、三四一、一八〇円で、これに対する所得税額は一三、五七九、七〇〇円であるにもかかわらず、利息収入の一部を除外し、よつて得た資金を仮名の定期預金とする等の手段により、右取得の一部を秘匿した上、昭和五三年三月一五日、神戸市生田区中山手通三丁目二一番地所在の神戸税務署において、同税務署長に対し、昭和五二年度分の所得金額が三、八三〇、七三七円で、これに対する所得税額が二一〇、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年度分の所得税一三、三六九、五〇〇円を免れ

二  昭和五三年度分の実際の所得金額は三六、六六七、四一三円で、これに対する所得税額は一四、九五八、〇〇〇円であるにもかかわらず、前同様の手段により、右所得の一部を秘匿した上、昭和五四年三月一四日、前期加古川税務署において、同税務署長に対し、昭和五三年度分の所得金額が五、八七三、七〇〇円で、これに対する所得税額はなく、還付を受けるべき源泉徴収所得税額が五三二、四六〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年度分の所得税一五、四九〇、四六〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判事全事実

一、検察官大塚清明作成の捜査報告書

一、被告人平津とめ子、同釣本彦七の検察官に対する各供述調書

判示第一の全事実

一、大蔵事務官作成の各調査書(検甲21 22号)

一、国税査察官作成の各調査書(検甲23 24号)

一、被告人平津とめ子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検甲26号ないし28号)

一、被告人釣本彦七の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検甲30号ないし34号)

判示第一の一事実

一、国税査察官作成の調査書(検甲17号)

一、大蔵事務官作成の証明書(検甲19号)

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲47号)

判示第一の二事実

一、大蔵事務官作成の証明書(検甲20号)

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲48号)

判事第二の全事実

一、国税査察官作成の各調査書(検甲2 24号)

一、大蔵事務官作成の各調査書(検甲4.6号)

一、小田祐子の大蔵事務官に対する質問てん末書(検甲10号)

一、被告人釣本彦七の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検甲11号ないし13号15.16号)

判示第二の一事実

一、国税査察官作成の各調査書(検甲3.5号)

一、平津研堂(検甲7.8号)、小田祐子(検甲9号)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、被告人釣本彦七の大蔵事務官に対するてん末書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲49号)

一、所得税確定申告書謄本(検甲51号)

判示第二の二事実

一、大蔵事務官作成の脱税計算書(検甲50号)

一、所得税確定申告書謄本(検甲52号)

(法令の適用)

被告人平津とめ子の判示第一の一、二の各所為

いずれも改正前の所得税法二三八条一項、二四四条一項、刑法四五条前段、四八条二項、一八条

被告人釣本彦七の判示第一の一、二、第二の一、二の各所為

いずれも改正前の所得税法二三八条(判示第一の一、二の各罪の刑につき懲役刑選択、判示第二の一、二の各罪の刑につき罰金刑選択)、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、懲役刑につき四八条一項、四八条二項(罰金刑につき)、一八条、懲役刑の執行猶予につき、刑法二五条一項

(裁判官 高橋通延)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例